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「裁判官の独立と安保法制違憲判決を求める緊急要請」への賛同のお願い

2021年8月15日

平和を愛する全国の市民の皆様

「裁判官の独立と安保法制違憲判決を求める緊急要請」への賛同のお願い

「集団的自衛権の行使」を容認した安保法制法は,一見明白に憲法違反であり,その目的はアメリカが海外で起こす戦争に自衛隊を動員することにあります。それは,世界に先駆け戦争を放棄し,戦力を持たず,交戦権を認めないと定めた憲法9条の徹底した平和主義を根底から覆しました。戦後70年余り,国民の根強い支持のもと,現実政治との緊張関係にありつつも歴代政権が守ってきた平和憲法のあからさまな破壊であり解釈改憲です。法律専門家のほとんどが違憲と指摘し,国会周辺や全国で思想信条・立場を問わず多くの国民が反対の声をあげたのはほんの6年前のことです。国会内で怒号のなか暴力的に強行採決がなされた風景は,政治が憲法の枠を乗り越え壊した場面でした。

安保法制施行後5年余り,日本はアメリカの世界戦略の一環としての武力行使・威嚇に否応なく参加させられる立場になっています。自衛隊による米軍の武器等防護,中東への派遣,実際は戦場だった南スーダンへの自衛隊派遣,敵基地攻撃能力の保有の検討,台湾危機を想定した南西諸島の軍事要塞化など,日本は平和国家から確実に軍事国家になろうとしています。

こうした中,内閣は議会軽視,国会は議論を軽視する多数派の横暴が強まっています。今こそ,憲法の番人・個人の尊厳と人権を守る最後の砦として政府や国会の過ちをただすべき裁判所がその役割を果たすときです。ところが,全国各地で提訴されている安保法制違憲訴訟では,申し合わせでもあるかのように,安保法制の違憲性と危険性に真剣に向き合わず,違憲判断を避ける判決が相次いでいます。憲法の枠を越えた政治が放置され,立憲主義と法の支配が大きく損なわれています。

日本国民は,全世界の人々に「恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生きる権利」があることを確認し,平和を愛し世界から構造的暴力による不正義な支配関係をなくそうとしている世界の人々を信頼して,世界に先駆け,武力に頼らない方法で,全力を挙げて世界から恐怖と欠乏をなくす努力をすることを憲法前文で誓っています。国際社会が,戦争を国際法上原則違法とし(国連憲章2条3,4),平和への権利宣言を採択し(2016年)核兵器禁止条約を発効させ(2021年),地球環境と人類の未来に向けSDGsに取り組むのと同じものです。日本国民の国際社会に向けた誓いです。これを単なる理想と片付けて冷笑し,大国の軍事覇権の一役を買って他国を武力で圧迫するのか,この誓いを守って平和的手段によって国際社会で努力するのかが問われています。

今日本は,大国の経済的・軍事的覇権という不正義に隷従し,これに与(くみ)して他国を圧迫する道に否応なく踏み出しています。今ならまだ間に合います。戦争になってからでは遅いのです。今こそ全力を挙げて安保法制以前に引き返すべきです。私達国民は,私達の同胞である自衛隊員が海外で罪なき人々を殺戮することも,自衛隊員が傷つき生命を失い,あるいは帰還しても心身を病み自殺することも望みません。世界に憎しみと恨みと不信をもたらす大量殺人と環境破壊,それが武力行使です。武力による威嚇は恐怖を与える脅しです。人の道に外れます。安保法制法がある限り,私達はこれにいつの間にか加担させられます。そして,自らが武力行使に巻き込まれる危険を引き受け,平時から戦争準備に駆り立てられることになるのです。

そもそも,時の政府が国民を無視して勝手に解釈改憲をするのを許せば,私達国民の権利が軽んじられる前例を作ることになります。安全保障についてどのような考えを持つかにかかわらず,それは,認められないはずです。解釈改憲という憲政上の汚点を正常化しなければなりません。特に,司法の独立,突き詰めればひとりひとりの裁判官が憲法76条3項で保障されたとおり,法と良心にのみ従い,政府に遠慮することなく裁判ができるようにすることが重要です。世界では憲法9条はよく知られており,平和への権利宣言確定には日本の法律家が力を尽くしました。日本の裁判官の憲法9条に対する姿勢は世界が注目しています。立法・行政・司法に携わる公務員には憲法を尊重し守る義務があります(99条)。国民には国政関与者に憲法を守らせ自らの人権・権利を守り抜く責務があります(12条,97条)。各地の安保法制違憲訴訟において個々の裁判官の独立を確保し,一見して明白に違憲の安保法制によって国民の権利が侵害されたことに正面から向き合う判決がなされるよう,主権者である国民の責務として,強くこれらを要求してまいりましょう。是非ともご賛同ください。

賛同者名簿は,氏名と都道府県名を記したものを,裁判係属中の各裁判所に提出します。

<呼びかけ人> 寺井一弘(代表)伊藤真(代表代行)内山新吾(副代表・山口)大塚武一(副代表・前橋)髙崎暢(副代表・札幌)福田護(副代表・神奈川・東京)松田幸子(副代表・宮崎)齋藤道俊(釧路)広田次男(福島いわき)北澤貞男(埼玉・東京)古川健三(東京)岡田尚(神奈川)加藤啓二(山梨)佐藤芳嗣(長野)松本篤周(愛知)小笠原伸児(京都)冠木克彦(大阪)河田英正(岡山)松岡幸輝(広島)梶原守光(高知)名和田茂生(福岡)森永正之(長崎)岡村正淳(大分)白鳥努(鹿児島)高木吉朗(沖縄)柚木康子(女の会)関口達夫(長崎)棚橋桂介(事務局長)武谷直人(事務局次長)内村涼子(事務局次長)宮崎純一(事務局職員)

安保法制違憲訴訟を審理する裁判所 御中

裁判官の独立と安保法制の違憲判決を求める緊急要請

私たちは安保法制違憲訴訟に関わる全国の弁護士が立ち上げた団体です。

2015年に成立したいわゆる安保法制は、一見明白に憲法違反です。日本の歴代政権が認めなかった集団的自衛権行使を強引な憲法解釈によって容認するなど、内閣と国会が立憲主義を踏みにじって、成立させたものです。その目的はアメリカが海外で起こす戦争に自衛隊員を動員することにあります。これは、先の大戦の反省にたって戦争を放棄し、戦力を持たず、交戦権を認めないと定めた憲法9条の平和主義を根底から覆す、憲法の明らかな破壊です。この安保法制の下で日本は今確実に平和国家から軍事国家に変わりつつあります。敵基地攻撃能力を持つ長距離巡航ミサイルを導入し、護衛艦を改修して空母を保有しようとしています。台湾をめぐる米中の軍事的緊張が高まる中、米軍と自衛隊の一体化がすすみ、日米同盟が一層強化されています。戦争の危険性はかつてなく高まっています。

このような状況に危機感を抱いた市民約7700人は、2016年から全国22の裁判所で、安保法制は憲法違反であり、平和的生存権などを侵害しているとして国を相手に裁判を提起しました。法律の専門家の証言などによって安保法制の違憲性と、安保法制による戦争の危険性、精神的被害の深刻さを訴えてきました。

しかし、これまで出された判決は、全て国の主張を追認して、憲法判断を避け、原告の訴えを退けました。政府に忖度した判決と言わざるを得ません。裁判所は、原告の主張と立証に正面から向き合わず、判で押したような似た判断をくりかえしています。本来であれば憲法の番人・個人の尊厳と人権を守る最後の砦として政府や国会の過ちを正すべき裁判所がその役割を果たそうとしていません。この由々しき事態を放置すれば、安保法制のもとで政府と国会は暴走し、再び戦争への道を突き進みかねません。先の大戦で国内外で2000万人ともいわれる犠牲者を出した日本は、2度と同じ惨禍を繰り返すわけにはいきません。

そのためには、三権分立のもと司法の独立を活かして立憲主義を取り戻す必要があります。憲法と法律にのみ拘束される裁判官ひとりひとりが良心に従って、政治部門に遠慮することなく判断を下すことが必要です。そうして、安保法制は憲法違反とする判決を出すよう強く求めます。

2021年8月15日

安保法制違憲訴訟全国ネットワーク  

寺井一弘(代表)伊藤真(代表代行)内山新吾(副代表・山口)

大塚武一(副代表・群馬)髙崎暢(副代表・札幌)福田護(副代表・神奈川)松田幸子(副代表・宮崎)

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