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目をそらすな!参加して関与せよ!を掲載しました。

1 1月22日、先が見えないほど真っ白な大粒の雪がふる札幌駅前で行われた核兵器禁止条約発効から1年のメモリアル行動に参加した。

マイクを握った青年や高校生が、「被ばく者からのバトンを受け継ぎ、被爆の実相を広げて行くのが私たちの世代の責任です」と熱く語っていたことに核兵器廃絶への希望を見る思いがした。通りかかった17歳の男子生徒が「学校で広島、長崎を学びました。核兵器はなしたいと願っている。日本も参加してほしい」と、16歳の高校生は「核爆弾について授業で学びました。存在することが恐ろしい。唯一被ばくを経験した日本が(締約国会議に)参加しないことが不思議です」と述べ、70歳の女性が、「若い人がこのような場所で話をしてくれ、伝える場があることは希望ですね」と口にしていた。核兵器廃絶の声が確実に次の世代へつながっていることを実感した。

被爆地広島選出で核兵器廃絶を「ライフワーク」とする岸田首相は、その著書の中で、「核兵器はこの地上からすぐに無くなるものではない。核兵器は人類にとって未来永劫、不可能な夢物語なのか、その答えはまだ分からない。」と傍観者的な書き方であり、その答えを出そうとする行動が示されていない。本当に「ライフワーク」なのか、その著書からは感じられなかった。

 一方で、「橋渡しに務め双方の努力を得ながら対話を粘り強く促す」という姿勢に固執し、すぐに核兵器を廃棄するとは言わない。核廃絶の課題を先送りする。高齢になった被爆者の多々たちの「私たちの生きている間に核廃絶を」という切望は首相の耳には届いていない。

岸田首相に強く訴えたい。核兵器禁止条約が有効に存在している事実から目をそらしてはならない。「橋渡し」や「対話」は参加し関与してこそ意味があり、実を結ぶものである。

残念ながら、締約国会議がコロナ禍で延期されたが、NATO加盟国であるドイツやノルウェーがオブザーバー参加を決めた意義は変わらない。両国は、日本と同様に、アメリカの「核の傘」のもとにある国である。その他、スイス、スエーデン、フィランドも参加を表明している。核による「恐怖の均衡」を打ち破るには従前の核軍縮の枠組み不十分であるとするヨーロッパの新たな動きである。

そのことを、岸田首相は真剣に受け止めて欲しい。85パーセントの国民が核禁条約への参加を望んでいる事実をしっかりと見て、決断し行動して欲しい。

核兵器は人類と共存できない悪魔の兵器である。「核のない世界」「再び被爆者をつくらない」という被爆者の願いが国際的に多くの賛同をよび、核禁条約が成立した歴史的な事実を常に心に刻んでおきたい。

今、核兵器廃絶という多くの人たちの共通の願いが、その実現は一直線には進まないであろうが、夢ではなく実現可能な課題として私たちの前にある。この国に核兵器禁止条約を批准する政府を作ることをはじめやるべきことはたくさんある。私たち一人一人の取組や運動が核廃絶へ確実な第一歩となり、加速する一歩とできる時代である。その時を大切にしたい。

(反核法律家協会 2022年春号掲載)

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