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永年在職の表彰を受けました。(弁護士 高崎暢)

 永年在職の表彰を受けました。
 北海道弁護士会連合会は、弁護士(裁判官、検察官の勤務年数も加算されます)40年間を務めた者に対し、札幌高裁長官、札幌検察庁長官ら法曹関係者の参加のもとで、長年の弁護士活動の努力への顕彰として、表彰状と記念品が贈ります。
 本年8月26日、札幌で開催された道弁連大会の席上、私も表彰されました。私が、被表彰者を代表してあいさつを行いました。その時の原稿を掲載します。
 本日、このような晴れの舞台で在職40年表彰をいただいたことに、34期を代表して、心から感謝申し上げます。道内の同期は15名ですが、コロナ感染予防のための欠席者、直近健康上引退せざるを得なかった者、病床に伏している者、転職した者、鬼籍にいった者がおり、本日は7名の出席となりました。全員そろって本日の表彰を受けられなかったことを非常に残念です。
 40年間は長い時間ですが、私たちにはあっという間であり、今日まで弁護士の職務を全うすることができました。これも、信頼できる同期がいたからであり、先輩後輩の皆さまのおかげと心から感謝しております。
 40年間の出来事を限られた時間で語りつくせませんが、まず、登録した時代は、サラ金被害が社会問題になるころでした。札幌弁護士会では、この問題が弁護士会に持ちこまれ、返済しない方がおかしいなどの意見もあり、激論の末、被害者救済の観点から相談センターに相談窓口が開設され、後日、消費者委員会が設置され、その後、活発に消費者問題に取り組んできました。「市民に開かれた弁護士会」の幕開けの時代でした。「腎臓売れ」などと脅す業者をはじめサラ金業者、商工ローンとの厳しい交渉が昨日のように思い出されます。
 二つ目は司法改革の議論です。20年前司法改革意見書が出されました。今では当たり間になっていますが、弁護士業務も権利擁護活動も両立し得るという「市民のための司法の実現」という札幌弁護士会の問題提起は全国に大きな影響を与えました。弁護士過疎問題には、道弁連は、会員の負担のもとで「すずらん基金」を立上げ、過疎対策に大きな成果を上げてきました。法曹人口や新しいIT化問題などの課題に、道内の後輩が熱心に取り組んでおられ、頼もしく感じております。
 少し私事になりますが、私は、修習時代から、北炭夕張炭鉱事故とかかわり、北海道で初めて炭鉱労働者が権利救済に立ち上がった裁判に関与したことをはじめ、中国人強制連行、原爆訴訟、ペースメーカー裁判、福島原発従業員の労災と損害賠償、生活保護暖房費不支給違憲訴訟など、多くの事件に出会うことができました。とりわけ、弁護士2年目から取り組んだ過労死問題。本人の体質と一蹴され、労災申請すら受付けず門前払い。「昔の奴隷の方が良かった。奴隷でも家族と一緒に食事がとれた」と遺書を残して自死した人もいました。厳しい中で、「過労問題研究会」を弁護士、医師、学者らと立上げ、労災を認めさせるには10年以上の時間を要しました。
 それは、社会の闇に憲法の光を当て、働く者を人間らしく扱うという憲法を豊かな内容にしたひとつの実践例でした。当然に、私一人ではなく、同期や先輩後輩、そして医師、学者らとの共同の力でした。
 私たちにとって、憲法を豊かにするという営みは弁護士業務の原点と言えます。
 弁護士は、憲法違反という判決は書けませんが、裁判に訴え、判決を通じて実現させることはできます。目の前の人権侵害の事実を素通りさせずしっかりと受け止めたいと思ってきました。それが弁護士の役割と、私たちは40年間考えてきました。  
 私たちは、弁護士スピリットだけは40年前と変わらないと自負しています。今日の表彰を、これからも日々の研鑽と業務に励めという叱咤激励と受け止め、職務を全うしたいと決意を新たにしています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
 本日は誠にありがとうございました。

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